皇室典範と皇室典範特例法

平成30年(2018年)7月1日

 

平成28年(2016年)8月8日、天皇陛下は、「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか」を、「天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら」、「個人として」これまでに考えてこられたことを、ビデオメッセージで表明されました。

 

象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日)

 

このお話のポイント、つまり陛下のお気持ちをまとめると、

 

・天皇の高齢化に伴う対処が、国事行為や象徴としての行為の縮小であってはならない。

・摂政を置くことは解決にならない。

・天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念される。さらに、天皇の終焉に当たる様々な行事が、新時代に関わる諸行事と重なってしまい、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれてしまう。こうした事態を避けたい。

 

このような陛下のお気持ちに応える方法はあるのでしょうか。

もし天皇が存命中に皇位を退き(退位)、皇位を継承することができれば、陛下のお気持ちに沿うことができるでしょう。

 

皇位継承の決まりは、「皇室典範」に規定されています。

皇室典範とは、皇室に関する制度が定められた法律です。

 

現在の皇室典範に基づくと、天皇が崩じた、つまり亡くなられた場合のみ、皇位が継承されます。よって、退位による皇位継承はできません。

 

安倍首相は、陛下のお気持ち表明を受けて、平成28年9月23日、内閣官房に「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」を設置しました。

 

天皇陛下は「公務の負担を減らしてほしい」とおっしゃったわけではありません。なぜ安倍首相はこのような有識者会議を設置したのでしょうか?

 

ともかく、国会による事前協議や上記の有識者会議の報告を受けて、日本政府は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」を作成し、国会に提出しました。

これは、今上陛下一代に限り、退位による皇位継承を可能にする内容の法律です。皇室典範の特例として作成されました。

 

皇室典範特例法案は、国会の審議による修正を経て、平成29年(2017年)6月9日に成立、平成29年6月16日に公布されました。

 

天皇の退位等に関する皇室典範特例法(成立:平成29年6月9日、公布:平成29年6月16日)の概要

 

この法律の施行日は、平成31年(2019年)4月30日です。よって、この日、今上陛下は退位され、皇太子殿下が即位される、とされています。

 

さて、この皇室典範特例法が憲法違反であり、問題なのですが、その前に、一つポイントがあります。

それは、皇室典範特例法は日本政府によって法案が作成され、国会に上程されたことです。これは重要なポイントなので、是非覚えておいて下さい。

 

次回以降のブログでは、皇室典範特例法はなぜ憲法違反なのか。そして、それはどのように問題であり、どれほどの問題なのかを解説します。お楽しみに。