平成30年(2018年)7月30日
前回の記事では、皇室典範特例法は違憲であることを示しました。
では、日本政府と国会は、どのような論理で皇室典範特例法を合憲と見なしたのでしょうか。
平成29年(2017年)6月16日、参議院にて、小西洋之議員により、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案の解釈等に関する質問主意書が提出されました(この質問主意書を読む必要はありません)。
それに対し、日本政府は、平成29年6月27日に答弁書(内閣参質一九三第一六六号 平成二十九年六月二十七日)を送付しました。
この答弁書に、日本政府が皇室典範特例法を合憲と見なした理由が書かれています。その箇所を以下に抜粋します。
「憲法第二条は、「皇位は、世襲のもの」とするほかは、皇位の継承に係る事項については、「国会の議決した皇室典範」すなわち法律で適切に定めるべきであるということを規定しているものと解されるところ、一般に、ある法律の特例や特則を別の法律で規定することは法制上可能であることを踏まえると、同条に規定する「皇室典範」には、皇室典範(昭和二十二年法律第三号)のみならず、その特例や特則を定める別法も含み得ると考えられる。すなわち、天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)は、皇室典範と一体を成すものとして、同条にいう「皇室典範」に含まれるものであり、天皇の退位等に関する皇室典範特例法附則第三条によって追加される皇室典範附則第四項は、その旨を明記して確認するものである。」
どういう意味でしょうか?
法には、特別法が一般法に優先する、というルールがあります。
広く原則となる規定が一般法です。
もし憲法第2条が、「(前略)皇室典範の定めるところにより(後略)」ではなく、「(前略)法律の定めるところにより(後略)」という条文であれば、皇室典範特例法は有効であり、皇室典範に優先します。
しかし、憲法第2条は「皇室典範」という特定の法律を指定しています。よって、皇室典範(の)特例法(皇室典範とは別の、外にある法律)に基づく皇位継承は認められません。
それでも、日本政府は憲法第2条の「皇室典範」には特例法も含まれる、と解釈しています。理解できません。
また、皇室典範の附則には、
「この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)は、この法律と一体を成すものである。」
という項が加えられました。
しかし、「一体を成」したところで、皇室典範(の)特例法が皇室典範とは異なる法律であることに変わりありません。
そもそも、「一体を成す」という言葉の意味が不明であり、どのように解釈することもできません。
ゆえに、皇室典範特例法による皇位継承は可能であるとする日本政府の言い分、国会がそれを認めた理由は不当です。
したがって、皇室典範特例法に基づく皇位継承は違憲です。
ただし、憲法第2条に書かれている「皇室典範」は「皇室に関する制度が定められた法律」という<概念>の意味であり、同時に「皇室典範」という<法律>も存在するのであれば、憲法第2条の「皇室典範」には、<法律>の「皇室典範」だけでなく、その特別法も含まれると考えられます。
このような解釈は可能なのでしょうか?不可能ではないかもしれません。
そこで、次回の記事では、憲法第2条に書かれている「皇室典範」は何を指すのか、そもそも皇室典範とは何かを考えます。
なかなかブログの更新ができませんが、どうか次回以降のブログもご期待下さい。
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