平成30年8月17日
前回の記事では、旧「皇室典範」とはどのような法であるかを理解することが、日本国憲法第2条に書かれている「皇室典範」の意味を理解する鍵となる、と述べました。
では、旧「皇室典範」とはどのような法なのでしょうか。
要点を箇条書きすると、旧「皇室典範」は、
・皇室の家法である。
・大日本帝国憲法と同時に欽定された。
・帝国議会の議決によって改正及び増補されることはない。
・一個の法規であり、複数の法規で構成される法規集ではない。
となります。
帝国憲法皇室典範義解(ぎげ/ぎかい)には、
「皇室典範ハ皇室自ラ其ノ家法ヲ條定スル者ナリ」(帝国憲法皇室典範義解/143頁)
と書かれています。
帝国憲法皇室典範義解とは、伊藤博文の著者名で刊行された、大日本帝国憲法と旧「皇室典範」の逐条解説書です。帝国憲法と旧「皇室典範」の起草者らによって作成されました。
よって、旧「皇室典範」は、皇室の家法です。
そのため、旧「皇室典範」は、皇位継承や皇族の区分、摂政、皇族の冠婚葬祭、皇族会議の構成などを規定しています。
旧「皇室典範」は、帝国憲法と同時に欽定されました。よって、帝国議会の議決によって制定された法ではありません。
また、旧「皇室典範」が帝国議会の議決によって改正されることや増補されることはあり得ませんでした。
帝国憲法第74条は、
「皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス」
と定めています。
また、旧「皇室典範」第62条は、
「將來此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ」
と定めています。
旧「皇室典範」は、一個の法規です。複数の法規が一体となって「皇室典範」という概念を構成しているわけではありません。
旧「皇室典範」は、このような性質の法です。
次回の記事では、旧「皇室典範」のこのような性質を踏まえ、改めて日本国憲法第2条に書かれている「皇室典範」の意味を考えます。
お楽しみに。
コメントをお書きください