平成30年9月21日
前回の記事では、旧「皇室典範」 とはどのような法であるかを解説しました。
改めて旧「皇室典範」の要点を箇条書きすると、旧「皇室典範」は
・皇室の家法である。
・大日本帝国憲法と同時に欽定された。
・帝国議会の議決によって改正および増補されることはない。
・一個の法規であり、複数の法規で構成される法規集ではない。
となります。
よって、
「旧『皇室典範』は、議会で改正も増補もされない、皇室の家法という一個の欽定法」
と言い表すことができます。
さて、日本国憲法第2条には、次のように書かれています。
「第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」
日本国憲法制定時点の「皇室典範」とは、特別な指定がなければ、それは旧「皇室典範」を指します。それが当時の「皇室典範」であり(皇室典範とは【1】 現「皇室典範」と「旧」皇室典範)、旧「皇室典範」制定時より前に「皇室典範」と呼ばれる法は無いからです。
しかし、日本国憲法第2条には、単に「皇室典範」ではなく、「国会の議決した皇室典範」と書かれています。つまり、日本国憲法第2条は、旧「皇室典範」ではなく、「『国会で議決された』という条件を満たし、それ以外は旧 『皇室典範』の性質を満たす法」によって皇位は継承されなければならない、と定めています。日本国憲法には、皇室典範とは何かが、一切書かれていないからです。
したがって、日本国憲法第2条に書かれている「国会の議決した皇室典範」とは、
・皇室の家法である。
・国会で議決される。
・一個の法規であり、複数の法規で構成される法規集ではない。
という法を意味します。
旧「皇室典範」は、議会で議決されていません。よって、日本国憲法制定当時は、「国会の議決した皇室典範」は存在しません。
ゆえに、日本国憲法制定当時では、日本国憲法第2条は、皇室の家法という一個の法規を国会の議決によって新しく制定する、という宣言も意味します。
このような日本国憲法の「宣言」に基づいて制定された法が、現「皇室典範」です。
日本国憲法は1946年(昭和21年)11月3日に公布され、1947年(昭和22年)5月3日に施行されました。
一方、現「皇室典範」は、1947年1月16日に制定され、日本国憲法と同時に施行されました。
したがって、現「皇室典範」は、日本国憲法第2条に書かれている「国会の議決した皇室典範」を満たす法であり、その条件とは、「国会で議決された皇室の家法という一個の法規」である、と言い表すことができます。
次回の記事では、これまでの記事をまとめ、改めて、皇室典範特例法に基づく皇位継承は違憲であることを論じます。お楽しみに。
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