平成30年10月27日
日本政府は日本国憲法という法に支配されています。日本政府は日本国憲法に従わなければなりません。
ここでは特に解説しませんが、容易に受け入れられる国家の仕組みかと思います。
しかし、皇室典範特例法の一件で、司法府は日本政府の憲法違反を違憲とみなしませんでした。
したがって、もしこのまま司法府が日本政府の違憲を違憲とみなすことなく、皇室典範特例法が施行されてしまうと、「論理的には」、司法府は国民の法令違反も違法とみなすことができません。
日本国内の全ての個人、法人、そして国家権力は、法の下に存在し、法に従わなければならないという意味で平等です。一対象の違法を違法とみなさない司法府は、「論理的には」、全ての対象において違法を違法とみなすことができません。
このままでは、司法府が違法を違法とみなせない日本になってしまいます。
どうでしょうか。恐ろしくないでしょうか。
司法府が違法を違法とみなせない日本では、例えば、刑法が無力化します。
例えば、刑法199条は、殺人罪を規定しています。
この条文には、「人を殺してはならない」とはっきり書かれているわけではありません。
この規定は、直接には、殺人罪という犯罪の要件とこれに対する刑の内容を定めているにすぎません。
しかし、刑法199条は、殺人を禁止する規範を内容として含んでいます。(参考:井田良(2017)『基礎から学ぶ刑事法 第6版』有斐閣)
これも、素直に考えれば容易に受け入れられるかと思います。
例えば、あなたの愛する家族や友人、恋人が殺されたとします。そして、殺した人は、裁判で死刑判決を受けたとします。
あなたは、あなたが愛する人を殺した者を許せるでしょうか?
「刑法には殺人罪の規定がある。しかし、殺人は禁止されていない。大切な人が殺されたけど、殺した人は死刑罰を受けるから、ま、いっか。」
「死刑罰を受け入れれば人を殺してもいいよね。」
と考える人はなかなかいないと思います。
よって、刑法199条は、殺人を禁止する法である、と考えるのが自然です。
このように、刑法は、国民に対して「~してはならない」と定めている行為規範です。
しかし、もし司法府が違法を違法とみなすことができなければどうでしょうか。
誰かが刑法で禁止されている行為をしたとしても、司法はその人を刑法違反とみなすことができません。
警察がその人を逮捕し、その人の裁判が行われたとしても、刑法で定められている刑罰がその人に科されることはありません。
そもそも、法に反している日本政府が、組織下の警察を使って刑法違反者を捕まえることはできるのでしょうか?
したがって、司法府が違法を違法とみなせない日本では、例えば、刑法は実質的に効力を失い、それによって国民の行動を規制することはできません。国民は、刑法違反とみなされることなく、刑法を犯すことができます。
ああ、恐ろしい…。
日本はこのような日本になってしまうのでしょうか?
次回は、連載「皇室典範特例法の違憲問題」の最終回です。お楽しみに。
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