2020年6月26日
今日から週1回、計10回程度にわたって「憲法9条と自衛隊」を連載する予定です。
当初は、4週程度で終わるかなと思っていたのですが、思っていたより長くなりそうです。
是非とも皆さま、日本の安全保障に関わる重大な論議にご参加ください。
まずは、この一本だけでも読んでみてください。
さて、連載「憲法9条と自衛隊」の最初のテーマは、自衛隊は合憲か否か、です。
改めて憲法9条の条文を読んでみましょう。
日本国憲法(昭和二十一年憲法)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(日本国憲法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov))
ポイントは、第二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という箇所です。
これで自衛隊は合憲になり得るのでしょうか?
結論を申し上げますと、自衛隊は合憲です。
なぜでしょうか?
それには難しい憲法学の知見があるのでしょうか?私たちは、憲法学を一から勉強しなければならないのでしょうか?
そうではありません。
私たちはただ、防衛省のウェブサイトにアクセスするだけでよいのです。
以下、防衛省のウェブサイトより抜粋します。
憲法第9条のもとで許容される自衛の措置
憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えますが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されません。一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容されます。これが、憲法第9条のもとで例外的に許容される「武力の行使」について、従来から政府が一貫して表明してきた見解の根幹、いわば基本的な論理であり、1972(昭和47)年10月14日に参議院決算委員会に対し政府から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」に明確に示されているところです。
少し解説します。
私たち日本は、憲法9条で「陸海空軍その他の戦力」を放棄しています。
では、もし外国の軍隊が日本に攻めてきたらどうでしょうか?「陸海空軍その他の戦力」を放棄している日本は、一切の抵抗なく、どうぞご自由にと攻撃を受け入れるべきなのでしょうか?私たちは、無抵抗で収奪、強姦、連行、虐殺、占領されるべきなのでしょうか?
つまり、憲法9条「だけ」を読むならば、私たちは、私たち日本を守ることすらできないのか、自衛権すら放棄しているのか、という問いが生じます。
ポイントは2点あります。
1点目は、憲法13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障していることです。
日本国憲法(昭和二十一年憲法)
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
(日本国憲法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov))
もし外国から攻撃を受ける際に無抵抗を強いられるならば、日本は「立法その他の国政の上で」、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を最大限尊重しているのでしょうか?国民は、生命、自由、及び幸福追求の権利が最大限尊重されていると納得して、何にも守られず誰も助けてはくれず、これが私たちの権利であると主張して殺されるのでしょうか?
2点目のポイントは、実は、「軍(軍隊)」にも「戦力」にも、国際法上の明確な定義が無いことです(これについては第3回で解説する予定です)。
「軍(軍隊)」とは何か、「戦力」とは何か、という国際法上の問題は、現在も残っています。
憲法9条と13条は拮抗します。どちらも憲法の条文であり、どちらかが優先するわけではありません。
ですから、「私たちは、私たち日本を守ることすらできないのか、自衛権すら放棄しているのか」を問うと、憲法9条にも13条にも反しない、どちらの条文も満たす合理的な解釈が求められることになります。
その結果、日本政府は上記のように解釈しています。
すなわち、「自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容されます。」という解釈です。
ここで、自衛のための必要最小限度の武力の行使が許容される実力組織は、「軍(軍隊)」でも「戦力」でもないと解釈されます。
これが、日本の自衛隊です。
したがって、自衛隊は合憲です。
どうでしょうか。合理的ではないでしょうか。
とはいえ、これだけでは、
「都合のいい解釈に過ぎない。」
「法学というより、政治的な解釈だ。」
というご批判もあるかと思います。
そこで、次回は、条文をそのまま読むだけではない、別の観点からも自衛隊は合憲であることを解説します。
これにより、日本国憲法及び9条の成立過程からも、自衛隊は合憲であることが明らかとなります。
次回もどうぞよろしくお願い致します。お楽しみに。
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