2020年7月10日
前回の記事では、日本国憲法の成立経緯を見ていただきました。
ポイントは、日本国憲法の前に「総司令部案」があり、さらにその前に「マッカーサー・ノート」があることです。
「マッカーサー・ノート」は、資料として国立国会図書館に所蔵されています。
国立国会図書館は、「マッカーサー・ノート」をインターネットで公開しています。
3-10 マッカーサー3原則(「マッカーサーノート」) 1946年2月3日(国立国会図書館)
それでは、憲法第9条の淵源となった戦争放棄に関する原則を読んでみましょう。
和訳は、極力原文の直訳としました。
War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection.
No Japanese army, navy, or air force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.
(訳)国家の主権としての戦争は廃止される。 日本は、その(自国の)紛争を解決するための手段として、さらには自らの安全を維持するための手段としてさえも、それ(戦争)を放棄する。 それ(日本)は、その防衛と保護を今や世界を動かしているより高い理想に委ねる。
日本の陸軍、海軍、空軍は今後一切許可されず、そしていかなる日本の力にも交戦権(交戦状態の権利)は今後一切与えられない。
次に、「総司令部案」を読んでみましょう。
「マッカーサー・ノート」と同様に、「総司令部案」も国立国会図書館に所蔵されており、インターネットで公開されています。
3-15 GHQ草案 1946年2月13日(国立国会図書館)
和訳は、今回も極力原文の直訳としました。
Article VIII. War as a sovereign right of the nation is abolished. The threat or use of force is forever renounced as a means for settling disputes with any other nation.
No army, navy, air force, or other war potential will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon the State.
(訳)第8条 国の主権としての戦争は廃止される。 力による脅迫または力の行使は、他の国との紛争を解決する手段としては永久に放棄される。
陸軍、海軍、空軍、またはその他の戦争の可能性(その他の戦力)は今後一切認可されず、そして交戦状態の権利は今後一切国家に与えられない。
これらのポイントは、「マッカーサー・ノート」では戦争を放棄する条件として「and even for preserving its own security」(自らの安全を維持するためでさえも)という記述があったのですが、「総司令部案」では力による脅迫または力の行使を放棄する条件から先の記述が消えていることです。
この「総司令部案」第8条が、現在の日本国憲法第9条の元であることは言うまでもありません。
最後に、改めて現在の正式な日本国憲法第9条を読んでみましょう。
(学術文庫編集部(2013)『新装版 日本国憲法』,講談社)
Article 9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
正式な日本国憲法にも、やはり武力による威嚇又は武力の行使を放棄する条件に「and even for preserving its own security」という記述がありません。
では、これはなぜでしょうか?
ここに、日本国憲法第9条を正しく解釈するために欠かせない歴史が隠されています。
ここまでで長くなってしまったので、この隠された歴史の発掘は来週に持ち越します。ご了承ください。
来週のブログも是非ご期待ください。お楽しみに。
皇紀2680年7月10日
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