2020年7月24日
これまで4週にわたって自衛隊の合憲性を考えました。
自衛隊は合憲である。その理由の一つが、「軍(軍隊)」には国際法上の明確な定義が無いためでした。
しかし、本当に軍(軍隊)には明確な定義が無いのでしょうか?
実は、軍(軍隊)を定義しているとも読み取れる条文を有する国際法も存在します。
それが、ジュネーヴ諸条約です。
ジュネーヴ諸条約は、武力紛争における傷者及び病者や捕虜の待遇等について定める条約であり、1949年にスイスのジュネーヴで締結された4つの条約を指します。
日本は、1953年4月21日にこの条約に加入しました。
さらに、1977年にはジュネーヴ諸条約追加議定書が採択されました。
日本は、2004年8月31日にこの議定書に加入しました。
正確には、軍(軍隊)を定義しているとも読み取れる条文は、1949年に締結された条約ではなく、 ジュネーヴ諸条約第一追加議定書にあります。
では、その条文(第43条)を読んでみましょう。
第四十三条 軍隊
1 紛争当事者の軍隊は、部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織さ れ及び武装したすべての兵力、集団及び部隊から成る(当該紛争当事者を代表する政府又は当局が敵対す る紛争当事者によって承認されているか否かを問わない。)。
もしこれが軍隊の定義であれば、自衛隊も軍隊に当てはまります。
では、これは軍隊の定義と言えるのでしょうか?
そして、これは日本国憲法第9条にも当てはまるのでしょうか?
第一に、これはジュネーヴ諸条約の条文のみに当てはまる「軍隊」という用語の「意味」です。ジュネーヴ諸条約の追加議定書の条文ですから、当然です。
つまり、これは「軍(軍隊)」を「定義」しているわけではありません。
自衛隊は、この「意味」においては、すなわちジュネーヴ諸条約を履行する上では、「軍隊」に当てはまります。
しかし、これは国際法が厳格に定めた「軍(軍隊)」の一般的な「定義」、というわけではありません。
第二に、これは日本国憲法が公布された後に締結された条約です。
仮にこれが軍(軍隊)の定義であったとしても、それを遡って日本国憲法に当てはめることはできません。
日本国憲法には日本国憲法の「軍(軍隊)」という「意味」があり、後に締結されたジュネーヴ諸条約(の追加議定書)の「軍隊」の「意味」(仮に「定義」だとしても)とは異なります。
したがって、
(一)ジュネーヴ諸条約(の追加議定書)は「軍(軍隊)」を「定義」していない。
(二)仮に定義しているとしても、それを日本国憲法に当てはめることはできない。
これが、結論です。
ですが、もし
「軍(軍隊)を定義しているとも読み取れる条文は、ジュネーヴ諸条約(の追加議定書)の他には無いのか!」
と尋ねられたら、私には答えられません。知らないからです。
一応、Wikipediaを読む限りそれは無さそうなのですが、どこかにあるのでしょうか?私にはわかりません。
どなたかご存知の方がおりましたら、教えていただけると幸いです。
今回の記事をもって、自衛隊の合憲性の検討は終わりです。
どうでしょうか。自衛隊は合憲だと考えられるのではないでしょうか。
次回は、憲法9条に書かれている「交戦権」の正しい解釈を考えます。
次回もどうぞご期待ください。お楽しみに。
皇紀2680年7月24日
コメントをお書きください