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憲法9条と自衛隊(4)自衛隊は憲法に明記されるべきか?

2022年7月7日

 

今回の「ロゴスの間」では、自衛隊は憲法に明記されるべきか否かを考えます。

 

現在の日本国憲法には、自衛隊は明記されていません。

それでも、これまで「ロゴスの間」で検証したように、自衛隊は合憲です。

現状でも、日本には自衛権が認められています。憲法を改正せずとも、自衛隊法を改正することで、自衛隊は日本を守ることができます。

 

では、自衛隊を憲法に明記する必要はあるのでしょうか?

自衛隊を憲法に明記することで、何か変わることがあるのでしょうか?

 

私は、自衛隊が憲法に明記されているか否かでは、日本国憲法に宿る国民の思想が異なると考えています。

 

例えば、日本国憲法には、「天皇」が明記されています。

天皇なき日本は、古代から現代まで続く「歴史と伝統で紡がれた日本」ではありません(ここでは、天皇は日本に必要であるか否かの議論はしません)。

つまり、天皇の存在は、日本が(歴史と伝統で紡がれた)日本であるための最低条件です(簡単に論じたことがあります『日本人の生き方論』)。

 

同様に、日本国憲法には、「国会」、「内閣」、「裁判所」が明記されています。

国会、内閣、裁判所のいずれかが欠けた日本は、(今度は)「近代国家としての日本」ではありません。

つまり、国会、内閣、裁判所という機関は、(近代国家としての)日本の要件です。

 

ならば、もし自衛隊が憲法に明記されると、自衛隊は日本の「要件」となります。

「自衛隊は日本の要件である」ならば、これはどういう意味でしょうか?

 

自衛隊は、日本を外国の脅威から守るための組織です(他にも任務はありますが、そもそもの目的は『自衛』です)。

その自衛隊を日本の「要件」とするならば、それは、日本(国民)が外国の脅威を認めていることになります。外国の脅威を前提として自衛隊を組織している、という意味です。

 

一方、現状、つまり自衛隊は憲法に明記されず、国会で議決された法律(自衛隊法)に依拠しているだけならば、その意味が弱くなります。

すなわち、

 

「私たち日本国民は、外国の脅威を前提としていない。日本国憲法の前文で謳うように、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼する。

でも、もし、万が一、日本に敵対する勢力が日本に攻めてくるならば、私たちは日本の平和を守らなければならない。だから、日本の平和を守るために、必要最小限度の実力組織は所有しようと、国民が国会で話し合って決めた。」

 

という意味になるのではないでしょうか。

 

この場合は、つまり現状は、自衛隊は日本の「要件」ではありません。

自衛隊は日本の要件ではないが、国会で話し合った結果、国民は自衛隊を認めている、という意味です。

 

このように、自衛隊を憲法に明記するか否かでは、自衛隊を日本の要件とするか否かという国民の思想が異なるのではないでしょうか。

 

自衛隊を憲法に明記すべきか否か。

みなさんはどうお考えですか?

 

ちなみに私は、自衛隊が憲法に明記されても反対はしません。

しかし、どちらかと言えば、自衛隊が憲法に明記されていない現状でよいのではないかと思います。

 

果たして、諸国民は平和を愛しているのでしょうか?

私たちはその公正と信義を信頼すべきなのでしょうか?

  

 

皇紀2682年7月7日