· 

憲法9条のシン・解釈(5)近現代国家における「戦力」(war potential)を定義する

2023年1月9日

 

明けましておめでとうございます。

今年の皆様のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。

 

年が明けてから初めての「ロゴスの間」です。

やっと、ひっさびさの「ロゴスの間」です。

 

今回は、近現代国家における「戦力」(war potential)とは何か?を考えることで、改めて自衛隊の合憲性を論じてみようと思います(しつこい!)。

 

日本国憲法第9条を読むと、

・陸海空軍は戦力に含まれる

・「war potential」に「戦力」の和訳が当てられている

 

ことが読み取れます。

「憲法9条と自衛隊(1)自衛隊は合憲である (Ⅰ)9条二項の解釈」

「憲法9条と自衛隊(1)自衛隊は合憲である (Ⅱ)日本国憲法成立経緯」

 

 

日本国憲法(昭和二十一年憲法)

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

○2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

日本国憲法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov)

 

Article 9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.

  In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.

 

 

「総司令部案」には既に「war potential」という文言が記載されているため、「戦力」が「war potential」と英訳されたのではなく、「war potential」が「戦力」と和訳されました。

(島村力(2001)『英語で日本国憲法を読む』,グラフ社. 39頁)

 

では、ずばり、近現代国家における「戦力」(war potential)とは何でしょうか?

それが分かれば苦労しないのですが、現実には「戦力」(war potential)の定義はありません(マジです)。

「軍」(軍隊)に定義が無いことは以前解説致しましたが、同様に「戦力」(war potential)にも確かな定義はありません。

「憲法9条と自衛隊(1)自衛隊は合憲である (Ⅴ)「軍(軍隊)」には定義が無い」

 

「戦力」(war potential)とは何かが分からなければ、それを基に自衛隊の合憲性を考えることはできません。

というわけで、ここで、「戦力」(war potential)の定義を試みます(!)。

 

長々と説明するつもりはありません。

単刀直入に、私ならば、「戦力」(war potential)を次のように定義します。

 

 

「近現代国家における戦力とは、他国と戦うことを目的とする国家の武力である。」

 

この定義の要点は、

・国家は、他国と戦うことを前提としている。

・国家は、武力で他国を攻めることもあれば自国を守ることもある。

・国家の武力が他国を攻めると戦争が起こり得る、それが「戦力」(war potential)である。

 

 

このように戦力を定義すると、私の知る限りでは、この定義と世界の戦争の歴史がよく一致します。ただし、私は戦争や歴史の専門家ではありません。

 

他国に対する侵略は、現代では国連憲章に違反します。

ゆえに、国連憲章に従う限り、諸外国は軍という戦力を駆使して他国を侵略することはできません。

しかし、諸外国の軍は、国連憲章が発効されるより前に存在していました。

よって、諸外国は軍という戦力で自国を守ろうとします。

 

一方、日本国憲法の前文と第9条より、日本(国)には他国と戦うという前提がありません。

自衛隊は、日本にとって他国と戦うことが目的ではなく、自国を守ることのみが目的です。

他国軍が日本に攻めてきた場合は、「war potential」は自衛隊ではなく相手国軍です。

 

したがって、先のように「戦力」を定義すると、自衛隊は「戦力」(war potential)ではありません。

ゆえに、自衛隊は合憲です。

 

日本が戦力を持たないことは、日本が交戦権を持たないことと一致します。

日本は他国と交戦しない、しかし防衛出動した自衛隊が他国軍と交戦することは起こり得ます。

日本は、このような考えで自国を守ろうとしています。

 

ちなみに、9条の「陸海空軍その他の戦力」の「その他の戦力」とは、「政府の造幣廠⦅ぞうへいしょう⦆あるいは他国に対し戦争を遂行する時ときに使用され得る軍需工場のための施設」という意味です。

(島村力(2001)『英語で日本国憲法を読む』,グラフ社. 39頁)

 

今回は、近代国家における「戦力」(war potential)の定義を試みることで、それを基に自衛隊の合憲性を論じました。

皆さんは、私が考えた「戦力」(war potential)の定義をどのようにお考えでしょうか?

 

次回の「ロゴスの間」もどうぞご期待ください。お楽しみに。

 

 

皇紀2682年1月9日